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これだけは知っておきたい!相続・贈与

税理士 深代勝美 掲載日:2016年11月30日
遺言書における債務(借入金)の負担者の記載
  税理士 深代勝美

1.趣旨

民法では、銀行の同意がなければ特定の人の債務にすることができません。しかし、借入金を負担する者を記載しないと借入債務が未分割となり、遺産の分割ができるまでは、債務控除を特定の人から差し引く事が出来ませんので、高い相続税を支払うことになります。

2.借入債務の民法規定

借入金などの債務は、遺言書で特定の相続人である兄が債務を負担すると記載されていても、債権者である銀行などの同意がなければ兄だけの借入債務とはならず、法定相続人全員の債務とされます(民427)。財産と違い債務は、共同相続人は連帯して債務を引き受ける、連帯債務の関係になります。これを、重畳的債務引受といいます。この状況では、遺言で債務を負担するとされた兄と弟の二人が債務を引受けたことになりますから、銀行はどちらにも債権を有していることになり、遺言書だけでは弟の債務は免除されないといことになります。つまり、銀行は遺言に拘束されないで、借入の返済を兄に求めることも、共同相続人である弟に求めることもできます。なお、この規定は、銀行に対して兄だけが債務者であると主張できないことであって、遺言で兄が借入債務を負担することと記載することは、相続人間では有効です。ですから、もし銀行から請求されて弟さんが借入債務を負担した場合には、兄に返済分を求償することができます。

では、弟が銀行に対して借入債務を負担しないとするのにはどうすれば良いのか。 遺言書に借入金の負担者が兄と記載されていて、兄だけの債務とするためには、兄に十分な返済能力があると銀行が認め兄だけが返済すれば良いと同意してもらうこと。それと、借入を引継がない弟が「免責的債務引受の契約書」に自署し、実印を押印することが必要です。「免責的債務引受の契約」は、相続時に共同相続人として引受けた債務を銀行が免除するための契約書です。これを行えば、他の相続人は債務から免責されます。債務を負担したくない相続人であれば、「免責的債務引受の契約書」に署名・押印をすると思いますが、自署と実印が必要なため、だまされると勘違いして押印を拒む相続人が多くいますので、免責の意味を十分説明することが必要です(表1参照)。

3.税務上の借入債務を単独で受けたい場合

実際に、多くの遺言書を見ても、借入債務など誰もほしい人はいないはずだという理由で、債務者を誰にするか明示していないことのほうが多いようです。 しかし、相続税対策を目的にアパートやマンションの建築資金について借入をしても、誰がこの借入債務を負担するか明示されていないと、法定相続人全員で負担することになります。この表のように、借入金の総額が財産を相続した相続人から債務控除されず、その人の相続税が高くなってしまうことがあります(表2参照)。

表1

  1. 遺言書で記載されている債務の状況(借入債務は全て長男が負担する)


  2. 債務引受の基本的な考え方(重畳的債務引受)


  3. 免責的債務引受


表2

【借入金3億円の負担者が長男と明示されている場合】

  長男 次男 合計
土地・建物 4億円 1億円 5億円
借入金 △3億円 0円 △3億円
差引 1億円 1億円 2億円
相続税(50%の場合) 0.5億円 0.5億円 1億円

この場合には、相続税を長男と次男が0.5億円ずつ負担します。

【借入金3億円の負担者が明示されていない場合】
(原則)

  長男 次男 合計
土地・建物 4億円 1億円 5億円
借入金 △1.5億円 △1.5億円 △3億円
差引 2.5億円 △0.5億円 2億円
相続税(50%の場合) 1.25億円 0円 1.25億円

マンションの土地、建物は長男が相続しました。その借入金3億円も当然長男が相続するつもりでいたが、遺言書で明示されなかったので、法定相続分に応じて借入金を1.5億円負担するものとして取り扱われますから、相続税は長男1.25億円、次男0円の負担となります。

(例外)相続税基本通達13-3 ただし書 を利用した場合
「ただし、共同相続人又は包括受遺者が当該相続分又は包括遺贈の割合に応じて負担することとした場合の金額が相続又は遺贈により取得した財産の価額を超える場合において、その超える部分の金額を他の共同相続人又は包括受遺者の相続税の課税価格の計算上控除することとして申告があったときは、これを認める」。

  長男 次男 合計
土地・建物 4億円 1億円 5億円
借入金 △1.5億円 △1.5億円 △3億円
差引 2.5億円−0.5億円← △0.5億円 2億円
相続税(50%の場合) 1億円 0円 1億円

この場合の相続税は、長男1億円、次男0円です。

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